LOVE navigator
恋愛に効くおすすめ本 恋愛に効くおすすめサイト 恋愛の悩み別ページナビ 恋愛小説 恋うた小説 恋愛コラム
ログイン
ユーザ名:

パスワード:



パスワード紛失

メインメニュー

読み物系

恋愛小説

恋愛小説
トップ  >  見えないゴールを探して  >  Vol.16 男としての能力

Vol.16 男としての能力

「こういうのって、ストーカーで訴えたら勝てそうな気がする」
  となりの席にどかっと腰掛け、満足そうに缶ビールを飲むマサキを見て、わたしはため息をついた。

  とつぜん広島行きの新幹線にあらわれたマサキは、
「リコがきのう電話で、広島に行くなんて言うから、オレも急に行きたくなって」
  などという、とってつけたような理由で自分がここにいる正当性を主張し、
「だからっていきなり一緒の新幹線にのりあわせることないでしょ」
  というわたしの抗議にたいして、
「だって一緒に行きたい、って言ったら、絶対リコことわるだろ」
  と、あんがい冷静な分析結果を披露すると、
「リコがいつ来るかわからないから、朝からずっと新幹線の改札で待ってたんだ。おかげで腹へったよ」
  と言って、手にもっていたお弁当と缶ビールが入ったビニール袋を見せ、まるでもともとわたしの同行者だったかのように自然に、空いていたとなりの席に座ってしまったのだ。

「オレたち友達だろ。ストーカーってのはやめてくれよ」
  マサキがお弁当をたいらげたころ、新幹線はひとつめの駅、新横浜を出発しようとしていた。もし、今マサキが座っている指定席の本来の持ち主がきてくれれば、このやっかいな傲慢男を追い払うことができたのに、新しく乗ってきた乗客のなかに誰もそこは自分の席だと言ってくる人はいなかった。

「だってそうじゃない。このあいだはいきなり会社まできて、今度は出張についてくるなんて、一体どうしちゃったのよ」
「オレさ、広島の尾道あたりをゆっくり散歩するのが好きなんだ。ただそれだけだって」
  というとマサキは、向こうについてからの時間をどうやって過ごすか、楽しみでしかたがないという表情をした。

「わたしは仕事で広島に行くのよ。わかってる?あなたの気まぐれには付き合えないんだからね」
「わかってるよ。あっちについたら別行動をとるからさ。まあそれまで、ちょっとした旅行だと思って楽しもうよ」
「だから。わたしは仕事なんだってば」
  わたしは心底あきれて文句を言うことをあきらめると、日焼け防止のためのサングラスをかけ、窓の外のほうを向いた。
  マサキはそんなわたしにかまわずに、高校生のころ修学旅行で行った広島での思い出や、これから広島についたら訪れようと思っている店についてなど、どうでもいいことをしゃべりはじめた。めんどくさくなったわたしは、それに適当に相づちをうちながら、早く目的地についてくれればいいと思った。


  大学4年生の春、一緒になったゼミの教室ではじめてマサキを見たとき、きっとモテるだろうと思った。まっすぐと見つめてくる意志の強そうな目、物怖じしないしゃべり方、ほどよく筋肉がついた引き締まった体。きっと守られたいタイプの女の子にとっては、男としての能力の高さを感じさせる魅力的な男性にみえるにちがいない、と。

  そして実際、マサキはモテていた。数人の輪の中にマサキがはいると、パッとその場が華やかになり、居合わせた女の子たちがマサキを意識しているのがわかった。そしてマサキ自身も、彼女たちに好意を寄せられていることに気付きながら、うまくバランスをとってみんなを公平に扱おうとしている様子がなんとなくみえた。そして、そうすればするほど、さらに女の子たちからの評価があがっていった。

  あるとき、ゼミ内でマサキを中心にちょっとしたモメごとが起こった。マサキのことが大好きな後輩の女の子二人が、競いあうようにアプローチをしはじめたのだ。

きっとお互い、ライバルが近くにいることで焦ってしまったのだろう。仲間うちで相手の女の子の悪口を言ったり、マサキの前で露出の多い服をきてみたり、ちょっとした手作りのお菓子をつくってきたり、まわりにいるものからみると、それらの行動はだいぶ滑稽だったのだが彼女たちは真剣だった。

  わたしは、マサキがいったいどうやってこの事態を収束させるのだろうと興味をもって観察していた。するとマサキは、ゼミ内に彼女たちがつくりあげる気まずい空気がひろがりきってしまう前に、あっさりとどちらの女の子とも付き合うこともなく、体の関係をもってしまった。

しかも彼女たちは、お互いにそのことを知りつつ、その立場に納得していた。そしてそれ以来、彼女たちによるマサキを手に入れるための、薄っぺらい駆け引きはぴたりとやんだ。

  どうしてそんなことができたのかというと、きっとマサキは人の心をコントロールする能力に長けているのだろう。ただし、マサキがとった行動が道徳的かといわれれば、決してそうではない。わたしはあるとき、罪悪感はないのか、とマサキに聞いてみた。

「別にだましているわけでもないし、あの子たちがそれでいいって言うんだから、罪悪感なんてあるわけないよ」
  そうマサキはけろりと答えた。ようするに誰も傷ついていないことが重要であって、かたちとして見える部分は問題ではないというのだ。
  実際、わたしもその意見には賛同した。というのも、そのころわたしは、どんなにわがままを言っても、わたしのことが好きなばっかりになんでも笑って受け入れてくれる優しい彼と、ずいぶんと身勝手な付き合い方をしていたからだ。


  そんなふうに、お互い微妙に共感できる価値観をもっているわたしたちは、これまでなんでも話し合える異性の友達として、適切な距離を保ちながら付き合ってきた。なのに、今日みたいに待ち伏せまでするなんて、最近のマサキの行動は目にあまる。どこからこんなふうになってしまったのか。

  思い返してみると、それはチサキちゃんと寝たことを知って、わたしがマサキを避けるようになってからだ。だったら、わたしのせいなんだろうか。以前は、マサキが同時に二人の女の子と寝ても、なんとも思わなかったのに。

きっと、あのころにくらべ、わたしは変わったのだ。今なら、あのとき付き合っていた彼に、もっと優しくできるかもしれない。わたしは、すでに名前も忘れてしまった当時の彼の、優しかった笑顔をぼんやりと思い浮かべた。今ごろどうしているのだろうか。幸せでいてくれたいいのに、と思う。


  ふと、となりのマサキがしゃべらなくなっていることに気付き見てみると、マサキは腕を組んで上半身が通路側にはみでてしまいそうなぎりぎりの位置で、シートにもたれて眠っていた。

食べて、飲んで、しゃべって、満たされて寝る。まるで子供のようだ。わたしは、マサキの自由奔放さに苦笑いをすると、マサキの黒い Tシャツからのびた二の腕に手をそえ、上半身をシートの中心に戻した。マサキはまゆを少し動かしただけで、そのまま眠りこんでいた。

  無防備な寝顔。わたしはマサキが起きないのをいいことに、その横顔をじっくりと観察した。しっかりしたあごのラインや、首すじに浮き出た血管に男っぽさをかんじて、少しドキッとした。

「マサキ」
  問いかけてみても、やはり反応は無し。わたしは、そっとマサキの首すじに手をのばし触れてみた。指先がトクトクと流れるマサキの鼓動をとらえた瞬間、皮膚から伝わるその感覚に、わたしたちは友達という以前に男と女なんだという自覚を促され、とたんに気恥ずかしくなって手をひっこめた。

  一体なにをやっているんだろう、と冷静になる。それもこれも、マサキがいきなりあらわれるからいけないんだ。わたしはこれ以上、マサキがいることで心を乱されることがないように、新幹線が目的地に到着するまで仮眠をとることに決めた。


「じゃあな。仕事がんばれ。オレはゆっくりと観光でもしてくるよ」
  広島駅につくとマサキはそう言い残し、ひとりタクシーに乗り込むと、さっさとどこかへいってしまった。
  やっかい者がいなくなってせいせいしたわたしは、気持ちを切り替えて、本来の目的である杉浦さんの実家へ向かった。杉浦さんのお父さん、正治さんにはすでに電話で、イベントの趣旨や当日会場にきてほしいという旨は伝えてある。あとは直接、段取りなどの打ち合わせをするだけで、わたしはそれがなんなく遂行されるものだと思っていた。

  広島駅からローカル線に乗り換え30分ほどしてついた駅から、歩いて5分ほどの人気の少ない住宅街の中に杉浦さんの実家はあった。まわりをコンクリートの壁に囲まれた一軒家で、背の高くない松の木が数本、玄関と門のあいだの狭いスペースに植えられており、そのため家全体を少し暗い印象にしていた。

  玄関わきの呼び鈴を押して少しすると、玄関の扉のくもりガラスの向こう側に人影がうつり、中から鍵をあける音が聞こえてきた。

「こんにちは」
  そう明るく声をかけ、扉が開くのを待つと、中から初老の女性が出てきた。正治さんの奥さん、美津子さんだった。
「どちら様ですか?」
  美津子さんは、見知らぬわたしの訪問に、少し戸惑ったように、暗い声で聞いてきた。
「東京からきました、友部です。正治さんはいらっしゃいますか?」
「いますけど・・。いったいどんなご用件ですか?」
  わたしはここで、どうして正治さんは奥さんに、わたしがくることを伝えてないのだろうと、少し違和感を感じた。

「あの、先日、正治さんと電話で話しをしたんですけど・・」
「電話で?主人と?まさか、そんなはずは・・」
  わたしが説明をし終わらないうちに、美津子さんが驚いた声を出した。マサキの突然の出現により困惑ではじまったわたしの一日には、まだ予測のつかない事態がまっていたのだ。
  つづく...

前
Vol.15 想いの領域
カテゴリートップ
見えないゴールを探して
次
Vol.17 遠い記憶

新しくコメントをつける

題名
ゲスト名   :
投稿本文
より詳細なコメント入力フォームへ

コメント一覧


この小説に関するご意見ご感想は、お気軽にコメント投稿フォームよりお寄せください。

プロフィール

名前:naomi
血液型:A型
出身地:静岡県
趣味:ギター(ヘタです!)
特技:恋愛をナビゲートすること
mixiやってます♪


携帯サイト

http://love-navigate.com
携帯へアドレスを送る

検索

運営

当サイトは PAGE DESIGN lab. により運営されています

PAGE DESIGN lab.
PROJECT
PAGE DESIGN lab.
XOOPS DESIGN lab.
LOVE navigate

PR

Bookmark

PageTop↑